この記事ではバリスタとして5年以上働く筆者が初心者やこれからバリスタを目指したい人に向けてミルクスチーミングの方法と基本知識について分かり易く解説しています。
本記事では主に業務用エスプレッソマシンを使用したスチーミングについて解説しています。

下記目次よりクリックすると記事の読みたい箇所から読む事ができます。
基本知識
ミルクスチームとは?
この技術はスチームしたミルクをエスプレッソに混ぜた
- カフェラテ
- カプチーノ
- フラットホワイト
などを作る際に必要となります。
シルキーでスムースなスチームミルクはコーヒーの甘さを引き立て、一杯のコーヒーをより美味しいコーヒーへと昇華させます。
また、このスチームスキルはバリスタの腕が問われる技術の一つで、ラテアートを施す際にも重要な技術になります。
基本的にはエスプレッソマシンにあるスチームノズルから出る蒸気を使い、泡を含んだスチームミルクを作ることが出来ます。
- エスプレッソ系ドリンクに必須
- スチームノズルの蒸気で作る
- 良いスチームはミルクの甘さを引き立てる
- カフェラテやカプチーノを作る際に必須
- 近年は独立した業務用ノズルも存在する
スチームミルクに使う道具
最低限必要な道具は
- エスプレッソマシン
- ミルク用ピッチャー
- ミルク
- ノズルを拭くダスター等
ミルク用ピッチャーは使用するカップサイズにもよりますが、ほとんどの場合一杯用が12oz(360ml)程、二杯用が20oz(600ml)程になります。
あるとなお良いもの
- スケール
- 温度計
初心者の方はスチームする前のミルクの分量を毎回測る事で不確定要素を一つ排除できるので安定感が増しより速く上達する事が出来ます。
また、スチーム後のミルクも毎回温度を測る事で適正な温度感覚を身につける事が出来ます。これはある程度経験のあるバリスタでも日々のルーティンに組み込んで実施すると良いでしょう。
- ミルクは冷えている方が良い
- 初心者は使用するミルクの量を測る
- 初心者はスチーム後にミルクの温度を測る
- 経験者も時々ミルクの温度を測ると良い
ミルクの温度
ミルクの温度コントロールはコーヒーの美味しさを引き出す上で極めて重要です。
世界標準のSCAでは適正温度を55℃-65℃としていますが、一般的に適正温度の中間である60℃をお店の基準として設けると良いでしょう。また、季節や客層に合わせて微調整するとなお良いです。
- 70℃を超えるとフレーバー低下
- 70℃を超えるとテクスチャ低下
- 70℃を超えると泡が細やかさを失う
- 適正温度は55℃-65℃ (SCA推奨)
- 上下限温度は50℃-70℃ (SCA上下限)
- コーヒーカップの予熱も重要
※SCA : Specialty coffee association
フォームの量
ミルクフォームはスチーミングのボリュームアップを行う際に調整する事が出来ます。
一般的なミルクビバレッジのフォームの量目安は
- カプチーノ 1.2㎝程
- カフェラテ 0.8㎝程
- フラットホワイト 0.4㎝程
となっています。
このフォームの量は作るコーヒーによってバリスタ自身がコントロールする必要があります。
- フラットホワイトはAUSやNZで定番
基本的なスチーミングの方法
ミルクスチーミングの手順
ミルクの用意
よく冷えた新鮮なミルクをミルクピッチャーの半分を超えないようように注ぐ。
12oz(360ml)のピッチャーの場合、その容量の半分である180mlを超えないように注意する。ピッチャーの半分を超えるとスチーム時のコントロールが難しくなりミルクが溢れてしまいます。
各カップサイズの最低限必要なミルク量の目安は下記の通り。
最低限必要なミルクの量
- 6oz(180ml)カップ 150ml程
- 12oz(360mi)カップ 300ml程
初心者の場合はミルク量が多めの方がやりやすくなります。(撹拌時間を長く取れるので)
初めのうちは下記のやや多めのミルク量で練習して徐々に最低限必要なミルク量に減らしていくと良いでしょう。
初心者向きのミルクの量
- 6oz(180ml)カップ 180ml程
- 12oz(360mi)カップ 360ml程
スチームの際にはコーヒーカップの大きさに応じて適切なミルクピッチャーを使用しましょう。
- 冷えたミルクは撹拌時間を長く取れる
- 可能であればミルクピッチャーも冷やす
- ミルクの量はピッチャーの半分まで
- 初心者はミルクの量をやや多めに
- 初心者は毎回ミルクの量を測ると良い
- 最低限の使用量でロスを削減できる
パージ(空ぶかし)
エスプレッソマシンのスチームノズルには水滴が滞留しています。
これがスチームするミルクに混入しないようパージという作業を行います。
機種によってはかなりの量の水滴が出てきますのでスチーム直前には忘れずに行いましょう。
ノズルのポジショニング(深さ)
ノズル先端がミルクに隠れるくらい差し込みます。(液面より1センチほど差込む)
差込が浅いと空気の取り込み量が多くなりすぎて泡の荒いミルクになてしまいます。
また、深すぎると空気を取り込む事が出来ないうえに極端な縦回転を生み出しミルクが溢れることもあります。
ノズルのポジショニング(位置)
ノズルの水平位置に関しては機種によって異なるため機種ごとの位置調整が必要となります。
また、バリスタによってもやり方が違っていたりと必ずしも正解は一つではありません。
初めはいくつかの方法を試してみてその中から自分に合ったポジションを使用すると良いでしょう。
下記にあるミルクピッチャーの中心と内壁の間の同心円上にノズルを差し込み、ピッチャーの内部で綺麗な渦を作り出せれば大丈夫です。
初めは二時の位置くらいで綺麗な渦が作り出せるか試してみましょう。

極端な縦回転を起こしている場合やノズルが回転の邪魔をしている場合には、上記図の同心円上(赤い点線上)でより良い位置を探して微調整しましょう。
- ノズルはピッチャーの内壁に当てない
- ノズルはピッチャーの中心に置かない
- 初めは同心円上の二時の位置で試す
- ノズルの位置はは同心円上で探す
ボリュームアップ(泡の取り込み)
ボリュームアップはスチームがスタートしてミルクの温度が35℃よりも低いうちに終わらせましょう。
ミルクが温まってから泡を取り込むとタンパク質が固まり始めるためシルキーに仕上げる事が難しくなります。また、ボリュームアップがスムーズに終わらないと撹拌時間も長く取れなくなるのでその分クオリティが低くなってしまいます。
業務用でパワーのある機種だと6−7秒ほどでスチームが完了するのでボリュームアップは最初の1-2秒で完了する必要があります。
ボリュームアップ完了が35℃までで、テクスチャリング完了が60℃なので少しでも速くボリュームアップを完了させるとその分テクスチャリングの時間を長く取れ、クオリティが向上します。
- ボリュームアップは最初の1-2秒で完了
- 35℃以上でタンパク質が固まり始める
- 良い音は「チリチリ」と泡を取り込む
- 悪い音は「ズボボボ」と泡を取り込む
テクスチャリング(撹拌)
ボリュームアップが完了したら即座にテクスチャリングに移行します。
この時ミルクの液面は上昇しているのでノズルも液面を追いかけるようにゆっくり移動します。
この時ノズルが液面よりも上に出てしまうと不要な泡が入ってしまうのでそうならないようにノズルの位置をコントロールします。
- ノズルは液面より下にコントロール
- ノズルは液面から飛び出さないよう注意
目標温度で停止
目標の温度に達したらスチームを完了します。
温度は基本的に手のひらで判断できるように練習する必要があります。初心者のうちはスチーム終了後に温度計を指して目標の温度になっているかを毎回測定すると良いでしょう。
- 初心者は毎回温度を測定する
再パージ
スチームが終了後には必ずパージを行いましょう。ミルクがノズルにこびり付いたり、内部に滞留するので忘れずに行いましょう。
カップに注ぐ
カップに注ぐ際は下記の4点に注意しましょう
- スチーム後はすぐ注ぐ
- 分離したフロスはよくほぐす
- カップは予熱する
- ミルクとエスプレッソはよく混ぜる
スチーム直後のミルクはその瞬間から分離をし始めています。そのため注ぐタイミングが遅くなるとその分フォームが重たくなり難易度が上がってしまいます。
これは技術と経験でカバーする事が出来ますが、初心者のうちはスチームが完了したたなるべく速く、なるべく同じタイミングで毎回注げるようにしましょう。
注ぐまでに時間を要してしまった場合には必ずミルクジャグを回転させて、分離したフロスをほぐしてからカップに注ぎましょう。
カップに注ぐ際にはカップが予熱されていることを確認しましょう。スチームの温度を完璧にコントロールしてもカップが冷えていた場合それだけで5℃ほどコーヒーの温度が下がっってしまうと言われています。
また、スチームミルクとエスプレッソはよくかき混ぜる事でその甘味を最大限に引き出す事が出来ます。Japan Barista ChampionshipやWorld Barista Championshipでは多くの選手がこれを実践しています。
- カップは必ず予熱する
- エスプレッソとミルクはよく混ぜる
- スチーム終了後はすぐに注ぐ
- スチーム後は毎回同じタイミングで注ぐ
- フロス分離時にはよくほぐしてから注ぐ
失敗例と原因
泡がもったりしている
- 泡の取り込みすぎ
- 撹拌が不十分
- スチーム完了から時間が経って分離している
泡が荒い
- 泡の取り込むタイミングが遅い
- 撹拌が不十分
ミルクスチーミングの応用技術
ミルクスプリットとは?
ミルクスプリットは大きなジャグでスチームした複数杯分のミルクを小さなジャグに取り分ける作業です。
このスキルはハイボリュームなオーダーを捌く繁忙店では必須です。
基本的にスチーム後の泡(フロス)はミルクジャグの中の泡は上に集まります。
そのためスチーム後の大ジャグから小ジャグに単純に取り分けても泡(フロス)の量は均一に取り分けることができません。
単純にそのまま取り分けただけでは片方のラテは泡が多くなり、もう片方のラテは全然泡がないという状態が発生します。
これをうまくコントロールし取り分ける技術がミルクスプリットです。
- 複数杯のミルクを同時にスチームし任意の泡の量で取り分ける
ミルクスプリットの基礎
ここではカプチーノ、カフェラテ、フラットホワイトなどのコーヒーのスプリットについて図を用いて解説しています。
この方法は筆者の自己流なのですが、これをマスターすると2杯だけでなく3杯、4杯のミルクスプリットにも対応する事ができます。
この方法で大事なのは自分の中で泡の単位を絶対的に固定する事です。
例えば、
フラットホワイト=1チリチリ
としてスチーム時に取り込む泡の量を絶対的に固定すると下記のように
- 3チリチリ カプチーノ
- 2チリチリ カフェラテ
- 1チリチリ フラットホワイト
コーヒーに応じた泡の量が数値化出来ます。
例えばカプチーノとカフェラテの複数を同時にスチームする場合は
3チリチリ + 2チリチリ = 5チリチリ
となり下記の図のように5チリチリ分の泡を取り込めば良いことになります。

もちろんこれは一杯分(1チリチリ)のフラットホワイトをマスターした上での話です。
まだフラットホワイト一杯分のスチームも安定していない方は先に一杯のスチームを安定させてからミルクスプリットに挑戦すると良いでしょう。
同じコーヒー二杯のスプリット
同じコーヒーを二杯作る場合には下記の3ステップで泡を50:50に取り分ける事ができます。
基本的な同時作成の組み合わせ(泡の適正量)は
- カプチーノ×2杯 (6チリチリ)
- カフェラテ×2杯 (4チリチリ)
- フラットホワイト×2杯(2チリチリ)
の3パターンがありますが同じコーヒー二杯の取分け手順は一緒です。



- 先にフラットホワイト=1チリチリをマスター
- 上記をマスターすると3〜4杯同時作成可能
異なったコーヒー二杯のスプリット
異なったコーヒーを二杯作る場合には下記の3パターンがあります。
- カプチーノ カフェラテ(5チリチリ)
- カプチーノ フラットホワイト(4チリチリ)
- カフェラテ フラットホワイト(3チリチリ)
カプチーノとフラットホワイトの組み合わせは取り分ける手順が一つ少ないため最も簡単に行えます。
カプチーノ カフェラテ(5チリチリ)




カプチーノ フラットホワイト(4チリチリ)



カフェラテ フラットホワイト(3チリチリ)




- カプチーノとフラットホワイトが一番簡単
- 注ぎ終わり時ミルクを使い切るとGOOD
ミルクスプリット解説動画
下記動画ではミルクスプリット(二杯取り)について分かりやすく解説してくれています。

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